『 ベスト・フレンド ― (1) ― 』  

 

 

 

 

 

 

 

「 え  しんゆう?  いるよ! 」

茶髪の少年は くりくり〜〜明るい瞳をきらめかせ応える。

「 僕のぉ〜 しんゆう はぁ  わたなべだいちくん♪ だいすきだよ〜ん 

「 うん まいあさ まちあわせでがっこうに行くんだ〜

 ことしはちがうクラスになっちゃったけどさ〜 やすみじかんは

 いっしょだもん。 

 あ 僕たち〜〜  < てつ > なんだよ?  

 いっしょに じこくひょう よんだり〜 あ この前ねえ〜

 わたなべクンのお父さんに てつどうはくぶつかん つれていってもらった!

 すっげ〜〜〜〜〜〜〜〜 おもしろかった ! 

少年は とてもとてもとて〜〜も幸せそ〜〜に笑う。

「 ず〜っといっしょだといいなあ〜 中学とか高校も  さ 

 しょうらいのゆめ? 僕? ・・・ う〜〜ん ・・・

 あ ケーキやさん がいいかなあ〜 僕 おりょうり、とくいなんだ〜

 ほっとけーき とか くっき〜 作れるよ!

 お母さんもね すばるのおかし、美味しいわあ〜〜〜 って 」

側にいるだけで なんだかほんわか・・・する、この少年の名前は

 

  しまむら すばる 君。

 

 

 

 § しんゆう

 

 

「 だいち〜〜  おくれますよ 

「 うん〜〜〜 」

玄関で お母さんのよく通る声が彼を呼んでいる。

「 忘れもの、ない? 体操服、 もった? 」

「 ・・・ あ   わすれた 〜  とってくる〜〜〜 」

「 急ぎなさいよ、 すばる君 待ってるわよ 」

「 ん! 」

 

  どたどた どた 〜〜〜〜 

 

だいち君は 自分の部屋に駆けていった。

「 ふふふ・・・ < すばるくん > がいちばん大切なのかしらね〜

 ま 仲良しでいいけどね〜〜 」

くすくすくす・・・ お母さんも楽しそう〜に笑う。

 

すばるクン とは 幼稚園に通い始めて間もない頃に出会った。

その日、あいにくの雨でだいち君は小さな傘を担ぎ、お母さんと出かけた。

「 さあ 行きましょう だいち 」

「 ウン  おかあさん〜〜 」

「 はいはい 

伸びてきた小さな手を お母さんはしっかり握った。

 

    いつまでも 甘えん坊なんだから〜〜〜

    ふふふ ま いっか。 

 

だいち君のお母さんは いつも笑顔のおおらかな性格のヒトで

お菓子をつくったり お洋服を縫ったりするのが得意なのだ。

 

  ともだっち ひゃくにん でっきるっかな〜〜〜♪

 

お母さんとだいち君は お歌を歌いつつ雨の道を歩いてゆく と ―

「 ・・・ あら? 

「 ? ど〜したの おか〜さん 

「 ほら あの方 ・・・ 傘 さしてないわ 」

「 ? あ ほんとだ〜〜 おか〜さん あのひと、かみ きんいろ! 」

「 そうねえ キレイな髪ねえ  小さな子供がいるわ 二人も!

 あらら ・・・ だいちと同じ制服着てるわよ 」

「 あ・・・ ホントだあ 」

前方に雨の中 左右からチビさんが二人、お母さんの手にしがみついている。

お母さんは 傘をさしたいのだが ― どうにもこうにも困って立ち往生しいた。

 

「  あの ― 」

 

だいち君のお母さんは すぐに側までゆきその金色の髪のひとに

傘をさしかけた。

「 ?? 

「 濡れますよ〜  お嬢ちゃん、 お母さんが傘をさすまで

 ほら おばちゃんと手をつないでましょう? 」

お母さんは そのおんなのヒトそっくりのちっちゃなオンナノコに手を

さしだした。

 「 ! ちがう もん ! 」

ちっちゃな女の子は 口をとんがらせた。

 「 え? 」

「 ちがうもん。 アタシ すぴか。 おじょうちゃん じゃないもん 」

「 あらあら ごめんなさいねえ  じゃ すぴかちゃん?  ほら 」

「 ん 」

お母さんの差し出した手を そのこは素直に握った。

「 お母さん、 お嬢さん みてますから。 傘 おさしなさいな 」

「 ! ありがとうございます〜〜〜 

 坊や ちょっとごめんなさいねえ  お母さん、貸してね 」

金色の髪のヒトは とて〜〜もキレイなヒトなんだけど

困った顔をしていた。

「 ん〜〜 」

だいち君は お母さんと手を離してすこし心細かったけど

胸をはって頷いた。

  ― だって。 やっぱり金色の髪の女の子がじ〜〜〜っと見てたから。

 

   すっごくきれいな きんいろのかみ!

   あ ・・・ め、みどりいろ だあ〜〜

 

「 〜〜 ・・・ ああ ありがとうございました。

 助かりました〜〜 」

水色の傘を広げると 金色の髪のヒトはとてもうれしそう〜〜に

ぺこり、とお辞儀をした。

「 いえいえ〜〜 さあ お嬢ちゃん・・じゃなくて すぴかちゃん。

 お母さんの側へいってあげて? 」

「 ん。  おばちゃん ありがと〜ございました 」

オンナノコは ぺこり、とお辞儀をした。

「 あらあ〜〜 エライわねえ〜〜〜 

 あのう〜〜 すぴかちゃんのお母さん  もしかしたら・・・お子さん達、

 星の空幼稚園 の 年少組さん ですか? 

「 はい。 あら ・・・ 同じ制服 ・・・ 

 じゃあ 奥様も? 」

「 はい。 これ ウチの息子です。 ああ 私 わたなべ といいます 」

「 僕! わたなべだいち! 」

「 まあ〜〜 島村といいます。 ウチのは双子で・・・ 」

「 しまむら すぴか ! よ 〜〜 

「 ・・・ しまむら すばる ・・・ 」

お母さんの後ろから 茶色の髪のオトコノコが 恥ずかしそう〜〜に

笑顔を見せた。

「 ♪  僕 だいち!  すばるく〜〜ん? 」

「 ♪  うん! 僕 すばる!  だいちく〜〜ん! 」

オトコノコどうしは するする近寄って手を繋いだ。

 

       ね ?  うん!

 

なんにも言ってないけど 二人はに〜〜〜っと笑いあい

この時から だいち君 と すばる君 の < つきあい > が

始まった。

二人はまだ知る由もないけれど 生涯にわたっての付き合いとなるのだ。

 

「 あらあ もう仲良しになったの? 」

「 うん おかあさん!  えっと・・・ すばるくん デス 」

「 はい こんにちは すばる君。 だいちのお母さんです 

「 こんにちは〜〜 僕 しまむらすばる  デス! 」

「 えっと ・・・ すぴかちゃん デス。 」

だいちクンは ちょっぴりほっぺを膨らませている女の子の側にいった。

「 はい こんにちは すぴかちゃん。 だいちのお母さんですよ 」

「 こんにちは〜 おばちゃん じゃなくて〜 だいち君のおか〜さん

 アタシ すぴか〜〜〜 」

「 まあまあ ありがとう〜 皆 なかよししましょうねえ 

「「「 うん !!!  」」」

「 ・・・ ありがとうございます。 

ちょっと離れてみていた金色の髪のヒトは にっこり笑った。

「 これから仲良し してね、 わたなべ だいち君  

「 え へ〜〜〜  は はい 」

だいち君は と〜〜っても嬉しそう〜〜に笑った。

 

 そして お母さん二人、子供たち三人 

傘をならべて 幼稚園に向かった。

 

  とっもだっち ひゃくにん でっきるっかな〜〜〜〜♪

 

賑やかな歌声に 雨の音なんか聞こえなくなっていった。

 

 

「 おか〜さん あした すばるくんとウチであそんでもいい 」

ある日 小学校から帰ってくると だいち君は一番にお母さんに尋ねた。

「 すばる君と? ええ いいわよ。 それじゃ クッキー焼きこうか 」

「 わあ〜〜い わあい くっき〜〜♪ 」

「 あ それじゃ あとですばる君のお母さんにお電話しておくわね?

 学校から一緒に帰ってらっしゃい。 」

「 う わ〜〜い♪♪ 」

 

小学生になっても だいち君とすばる君は仲良しだ。

すばる君ち は 岬の方で遠いのだけど、だいち君はよく遊びにゆく。

お家には 白いお髭のおじいちゃまがいらして いつも面白いお話をしてくれる。

算数の宿題 とかも とて〜〜もわかりやすく説明してくれたりもする。

金色の髪のキレイなお母さんは とびっきり美味しいシフォン・ケーキやら

蒸しパンを作ってくれるのだ。

日曜には だいち君によく似たお父さんがいて いろんな写真を

見せてくれたり クルマの掃除を一緒にしたり する。

オトコノコたちは お互いに遊びに行ったり来たり・・・している。

 

「 たっだいま〜〜〜 おか〜さ〜〜ん 」

「 こんにちは〜〜 すばるデス 

玄関で元気な声が聞こえた。

「 お帰り〜〜 いらっしゃい、すばるく〜〜ん 」

だいち君のお母さんは にこにこ・・・迎えに出てきてくれた。

「 さあ あがって あがって すばる君。 

 二人とも手を洗ってウガイしたら リビングにいらっしゃい。

 お日様ぽかぽかよ〜 レジャー・シート、敷いてあるから自由に遊んでね 」

「 わあ〜〜いい〜〜〜  すばる君、 こっち! 」

「 うん だいち君  あ だいちくんのおばちゃん、 これ〜〜

 僕のおか〜さんから〜〜〜 」

すばるクンは 紙袋を差し出した。

「 え なあに? あけてもいいかしら。 」

「 ウン。 」

「 ・・・・ まあ〜〜 マドレーヌ!! すばる君のお母さんお手製の

 マドレーヌね? 」

「 うん。 みなさんでどうぞ って 」

「 わ〜〜〜 ありがとう! だいちのお父さんね、これ 大好きなのよ 

 もっちろん おばちゃんも大好き♪ 

「 うふ 僕のお父さんもお母さんのまどれ〜ぬ 大好きだよん  」

「 そうよね〜〜 ありがとうございます ご馳走さまでした って

 お母さんに伝えてね 」

「 うん! 

 

 カチャ カチャ ―  カチャ ・・・・

だいち君のお母さんは さささ・・・っとさっくり卵白を泡だてた。

「 さて と。 生地と合わせて絞りだし、と。 」

オトコノコ達は 仲良くリビングで電車の模型やら時刻表、地図を広げ

遊んでいる。

「 ふふふ 楽しそうねえ 〜〜  それじゃ ・・・ 」

「 おか〜さん のど かわいた〜〜 」

だいち君が キッチンに現れた。

「 あらら ・・・ ジュースがいい? 麦茶にする?  すばるクンは 

茶色の髪のすばる君もついてきた。

「 僕 ・・・ むぎちゃ がいいです 

「 はいはい ちょっと待ってね〜〜〜 

「 ― おばちゃん なにつくってるの 

「 クッキーよ。 これからテンパンに絞りだして焼くの 」

「 ・・・ しぼりだす ・・? 」

「 そうよ〜 こうやってね〜〜 」

お母さんは慣れた手つきで くるり、くるり、とクッキーのモトを絞りだしてみせた。

「 ・・・ ぼく やってみたいデス 」

「 あら やってみる?  ほら・・・ こうやってもってね〜  

「 ウン ・・・ う・・・っんと 

すばるクンは ぷっくりした手でかなり上手にくるん くるん ・・・

 テンパンに絞りだした。

「 わあ〜〜 上手ねえ〜〜〜 すごい すごい〜〜〜 すごいなあ〜

 ねえ だいちもやってみる? 

「 ・・・ 僕 どろっぷ・くっき〜 がいい。 」

だいち君は クッキーのモトをスプーンで掬って ぽん ぽん ・・・と

テンパンに並べた。

「 うん いいわねえ〜 皆で作ったクッキーだわ〜〜〜

 きっとものすごく美味しいわよ〜〜〜 さっそくオーブンに入れなくちゃ。 」

「「 わあ〜〜〜い〜〜〜〜 」」

楽しい楽しいオヤツ・タイムとなった。

 

 

 

 

  コンコン ・・・  勉強部屋のドアがノックされた。

 

「 開いてるよ〜〜 」

「 だいち?  手紙よ。 フランスから!  」

「 え?? 」

思わず振り向いた息子に お母さんはに〜んまり笑って

少し厚めの封筒を渡した。

「 ふふふ〜〜〜 すぴかちゃんから でしょう? 

「 ・・・ お〜〜 そうだ!  へ〜〜 イマドキ てがみ かあ〜〜 

 激レアだなあ〜 」

「 あらあ〜〜 いいじゃない、素敵♪

 ね・・・ あとでちょこっとだけでもいいから おしえて。

 すぴかちゃん 元気かしらあ 」

「 はいはい わかったから。  さんきゅ 」

だいち君は うなずきつつ お母さんを部屋から押し出した。

 

「 ふう〜 もう〜〜 オバサンなんだからあ〜  ま 本当だもんな〜

 え・・・ なんだって ・・・ 

 

  パサリ。  封筒の中からは薄い便箋と小さなカードが入っていた。

 

「 ・・ なんだ これ?  必勝祈願護り? これ すっぴ〜の字じゃん 

 え ・・・ 」

手作りらしい < お護り > を手に だいち君は ふんふん・・・と

短い手紙を読んだ。

 

   だいちくん。  元気でがんばってる? 

   ウチの愚弟は どうかなあ〜〜〜

 

   もうすぐ本番でしょ、お護り、作ったよ〜〜

   これでアタシもバカロレア通過したから。

 

   がんばれ〜〜〜 一ツ橋 突破せよ!!!

 

                 すぴか より

 

「 ・・・ ん〜〜〜〜  ありがと すっぴ〜〜〜 

 俺 絶対合格するから。  そんでもってウチの店手伝って

 そんでもって  ―   必ずすっぴ〜を迎えにゆくんだ! 

 

小さなお護りをきゅ・・・っとにぎり わたなべだいち君は

またまた決意を新たに 受験勉強の追いこみにかかるのだった。

 

 

  そして ―  その春。

しんゆう・二人は 見事に    サクラ咲く    となったのだった♪

 

 

 

          **************************

 

 

 

 

「 友達? それも、親友?  そうねえ ・・・ 」

フランソワーズはしばらく考え込んでいた。

「 そう ねえ ・・・ カトリーヌ かしら ・・・  」

彼女は 遠い眼差しを窓の外に向けた。

二月の湘南地方は 光の春、 風はまだまだ冷たいけれど

太陽は次の季節の到来を しっかりと告げてくれる。

 

     あの頃 ・・・・

 

     幸せしか知らなかった わたし・・

 

庭の花壇では 水仙が花盛り、白い花が揺れている。

「 うふ・・・ 彼女 どうしているかなあ ・・・

 プロのダンサーになって  幸せに結婚したかしら ・・・ 」

思わず自分自身の結婚指輪に視線を落とし、ほう・・・っとため息が漏れてしまう。

「 彼女とは仲良しだったけど でもず〜〜〜っとライバルでもあったの。

 そうねえ ジュニア・クラスのころから かもね・・・

 二人とも バレエ団に入りたくて オーディションは必死だったもの。 

 カトリーヌはね 回転技の天才だったわね〜〜〜 

 今じゃ 32回のグラン・フェッテ、 全部ダブルで回るヒト、たくさんいるけど

 わたし達の頃は 四回に一回ダブル〜とかくらいだったの。

 でも彼女は全部ダブルで回ってみせる! って努力してたわ 」

いったい何十年前のことなのだろう ・・・ ますます彼女の眼差しは

遠いものとなってしまう。

その先には 古い稽古場で熱心にレッスンする少女たちが

みえているのかも ・・・ しれない。

「 ふふ ライバルで親友 なんて ヘン?  でもいいじゃない?

カトリーヌ ・・・ バレリーナとして成功して幸せになっていてほしいわ 」

 もう昔話だけど ・・・と 彼女はため息をつく。

「 え? 今? 

 今は ・・・ そうねえ みちよちゃん も親友かなあ 

 全然タイプが違うからライバルってのとはちがうわねえ。 なかよし かな。

 あ。 タクヤだって ある意味、親友だわ。

 あのコ 才能あるのよ  今のヒトたちは幸せよねえ 

 え ジョー?  いやだあ〜〜 自分の夫は自分の半分 でしょ? 」

 

     カトリーヌ ・・・ 幸せに生きていてほしいなあ 

 

 

 

  § 親友 ( ライバル ) 

 

 

 

「 え??  行方不明?? ウソでしょう??? 」

カトリーヌは稽古場の事務所で 思わず声を上げてしまった。

「 し〜〜〜〜 これは内密なのよ 

事務所のヒトはあわてて口の前に手を当てた。

「 あ・・・ すいません  でも それ ほんとう?

 だって・・・ オーディションに受かって入団したのでしょう?? 」

「 それがねえ ・・・ どうも ・・・ 

「 どうも ってなに? それで彼女 ・・・ フランソワーズは? 」

「 だから 行方不明なんですって 」

「 そんな ・・・ 」

「 カトリーヌさん これは極秘ですから 」

「 ・・・ わかったわ。  あ  第五レッスン室、 使えます? 」

「 自習? ええ どうぞ 」

「 メルシ 」

カトリーヌは きゅっと表情を引き締めると 更衣室に向かった。

 

   トントン カタン。 

 

ポアントを慣らすとほとんどストレッチもせずに

彼女は グラン・フェッテを始めた。

 

  しゅ ・・・ しゅ  ・・ しゅ ・・・・ !

 

右脚が小気味よく宙を切り裂いてゆく。

途中から ダブル ― 一拍の間に二回転する ― を入れ始めた   が。

 

   ぐ ・・・  あ あ〜〜〜  

 

      ガタン。  

 

勢いが付きすぎ、バランスが崩れた。  軸足がズレて  −−−

 

    バンッ !!!  そのまま床に座りこんだ。

 

「 どうして ・・・!!  なんで!?!

 ファンに勝つことだけど 目標にしてきたのに 〜〜〜〜 !!!

 私は  どうしたら いいのよ??  」

 

カトリーヌは 天井を仰ぎ泣き出した。

 

「 ファン あなたの踊り、いつだって憧れだった ・・

 あの優雅な動き 豊かなアームス 脚さばき ・・ 永遠の憧れだったのよ!

 この前のコンクールでは負けたけど 

  ・・・ でも 次こそは! って 必死で練習していたのに !! 」

「 私 ・・・ 何を目標にしたら いいの ・・・?

 行方不明 なんて ・・・あんまりだわ ・・・・! 」

「 フランソワーズ・アルヌール ・・・ 私の永遠のライバルで 憧れ・・・ 」

ひどい ひどい ・・・ 

カトリーヌは ひとり泣き続けていた。

 

  ここにも あの亜麻色の髪の少女のために 涙をながす人物がいたのだった。

 

 

 

   § 親友 ( なかよし ) 

 

 

「 なあに? なにかアタシに聞きたいの? 」

小柄で丸顔、愛嬌たっぷりの笑みでその女性は答えてくれた。

更衣室から よく通る声が聞こえてくる。

「 みちよ〜〜〜 先に着替えてるわね〜〜 」

「 あ うん! すぐにゆくから。 お茶 しようね〜 」

更衣室に声をかけてから 大きな瞳をくるり、と回す。

「 え?  フランソワーズ?  ああ 今 さけんでたコだよ?

 よぼうか?  え ちがうの? 

なんなの? と少し真剣な顔になったのだが ・・・

「 あ〜 彼女との < おつきあい > について? 

 う〜〜ん もう長いかもなあ ・・・彼女が研究生で入ってきた時からだもん。

 あはは アタシだってもっと若くてぴっちぴち だったんだよ? 」

今も 元気いっぱいな彼女、みちよさんは屈託なく笑う。

「 あ〜んなキレイな容姿なのにさあ  なんか ・・・ 遠慮してて・・・

 おどおど・・・ってのとは違うんだけど ね。 

 なんなのかなあ〜 笑ってごらんよ〜〜って思わず 声かけちゃったんだけど 」

みちよさんの笑顔には 誰でもほっとすることでしょう・・・

まして 初めての場所で緊張している時には。 

まあ ― いろいろ事情もあるし ね。

「 事情? さあ・・・ そういうの、聞きほじるの、好きじゃないし。

 アタシは 今のフランソワーズが好きなだけ だもん。

 可愛いよお〜 彼女。  奥さんになっても お母さんになっても

 中身はさ 万年少女 みたいなトコ、あるし。 」

そりゃ そうだろう・・・ 

所謂 < 同期 > として ライバル心とか感じませんか〜

「 ライバル・・・?  彼女と? 

 う〜〜ん 全然違うタイプだけどねえ〜  あんまし感じないなあ

 なんで仲良しなのかって?  そう ・・・ だなあ〜〜

 なんつ〜か ウマがあうっての?  フランソワーズの のほほ〜んと

 したとこ、 好きなんだわあ〜 」

あなたも その ふわ〜〜ん とした雰囲気がとても魅惑的です。

「 あは そう?  ありがと。

 彼女とアタシとは踊りも全然違うし ・・ あ〜いう風に ふわあ〜〜〜っと

 空気を感じるおどり、 いいなあ〜って思うわね。

 アタシ? アタシはひたすらアレグロとか回りモノがすき。 」

知ってます〜〜 みちよさんの踊りは小気味よくパンチが効いていて・・・

素晴らしいです。

「 あは ありがと。 でもね〜〜 アタシもそろそろオバサンだからね〜

 そろそろ若いコたちの時代 かなあ・・・・  あ アタシも結婚したし。

 ま フランソワーズみたくず〜〜っと踊っていられるといいなあ と

 思ってるの。 」

他に仲良しさんっています? フランソワーズさんに。

「 う〜〜ん・・・ あ そ〜そ〜 タクヤってば ホンキっぽいんだよね〜〜

 彼ってばさ〜 イケメンで上手だしさ〜 モテ男なんだけど〜

 あいつは フラン一途! なんだよねえ ・・・

 ホントはか〜〜なり純情なんじゃないかなあ〜〜ってアタシは思ってる。

 アイツねえ いいヤツなんだよ、うん。 

 踊りはもう〜〜どんどん上手くなってく・・・ってトコだしね。

 でもね あいつは フランソワーズ 命! なのよぉ〜〜

 マジで ホンキ なのね〜〜  かわいそうに ・・・

 あっは むり〜〜って 誰か教えてやったらど?

 フランソワーズの旦那さん すっご〜〜く優しいヒトでさ

 彼女にべた惚れ・・・ってか あそこは熱々夫婦なんだよ 」

幸せなご夫婦なんですねえ〜〜

「 仲良しさんだよ。  ま 誰だっていろいろ・・・事情はあるよね。

 アタシはそんなコトに 興味ないし。

 アタシはその本人がすき! と思えばそれでいいんだ。 」

 

「 みちよ〜〜〜 ね〜〜 終わったぁ? 」

 

更衣室から金髪の女性がにこにこしつつ出てきた。

「 あ ごめん 今ゆくよ。  

 ねえ あんた、 ご本人に直接聞いてみれば?

 気さくなコだから 答てくれるわよ、 じゃ ね〜〜 」

丸顔の彼女は ひらひら〜〜 手を振って更衣室へ消えた。

 

「 ? 」

「 あ  あのぅ〜〜 フランソワーズ さん ? 」

「 はい? 」

「 あ あのう つ 次の舞台についてなにか伺えますか? 」

「 ・・・ ああ  おん・すて〜じ  とかの方?

 もう発表になってますけど 

金髪の彼女は 廊下の掲示板をちらり、と眺めた。

「 あのね〜  今度 みちよ と創作作品 踊るのよ  若い男の子いれて。

   マダムの振りつけよ、以前の作品を振り直してくださる予定です。

 タイトル?   イレギュラー トライアングル  というの。 」

「 とらいあんぐる ?  さ 三角関係 ですか?? 」

「 あ〜〜 そう かも。

 この作品は代々、大きなひと、小さなひと 男性 で踊ってきたのですって

 わたし ものすご〜〜くたのしみ 」

「 クラシック なんですか? 」

「 ん〜〜ん ・・・ ポアントは履くけど、

 コンテ ( コンテンポラリー・ダンス ) に近いかな〜〜

 うっふっふ〜〜〜 楽しみにしててくださいね〜〜 」

 

「 おまたせっ ! 」

丸顔女子が 飛び出してきた。

「 あ〜〜 それじゃ また〜〜   みちよ、ゆきましょ〜 」

「 うん♪ 」

凸凹コンビは 仲良くスタジオを出ていった。

 

   は あ ・・・ 仲良し でも ライバル かあ ・・・

   そう それも あり、ですよねえ ―

 

 

 

Last updated : 02,05,2019.             index       /     next

 

 

*********    途中ですが

それぞれの人々にとっての ベスト・フレンド について

書いてみたいな〜〜と思いました。

すいません、体調不良で短くなってしまったです、

続きは もう少し書けると思います〜〜 <m(__)m>