『 ベスト・フレンド ― (1) ― 』
「 え しんゆう? いるよ! 」
茶髪の少年は くりくり〜〜明るい瞳をきらめかせ応える。
「 僕のぉ〜 しんゆう はぁ わたなべだいちくん♪ だいすきだよ〜ん 」
「 うん まいあさ まちあわせでがっこうに行くんだ〜
ことしはちがうクラスになっちゃったけどさ〜 やすみじかんは
いっしょだもん。
あ 僕たち〜〜 < てつ > なんだよ?
いっしょに じこくひょう よんだり〜 あ この前ねえ〜
わたなべクンのお父さんに てつどうはくぶつかん つれていってもらった!
すっげ〜〜〜〜〜〜〜〜 おもしろかった ! 」
少年は とてもとてもとて〜〜も幸せそ〜〜に笑う。
「 ず〜っといっしょだといいなあ〜 中学とか高校も さ
しょうらいのゆめ? 僕? ・・・ う〜〜ん ・・・
あ ケーキやさん がいいかなあ〜 僕 おりょうり、とくいなんだ〜
ほっとけーき とか くっき〜 作れるよ!
お母さんもね すばるのおかし、美味しいわあ〜〜〜 って 」
側にいるだけで なんだかほんわか・・・する、この少年の名前は
しまむら すばる 君。
§ しんゆう
「 だいち〜〜 おくれますよ 」
「 うん〜〜〜 」
玄関で お母さんのよく通る声が彼を呼んでいる。
「 忘れもの、ない? 体操服、 もった? 」
「 ・・・ あ わすれた 〜 とってくる〜〜〜 」
「 急ぎなさいよ、 すばる君 待ってるわよ 」
「 ん! 」
どたどた どた 〜〜〜〜
だいち君は 自分の部屋に駆けていった。
「 ふふふ・・・ < すばるくん > がいちばん大切なのかしらね〜
ま 仲良しでいいけどね〜〜 」
くすくすくす・・・ お母さんも楽しそう〜に笑う。
すばるクン とは 幼稚園に通い始めて間もない頃に出会った。
その日、あいにくの雨でだいち君は小さな傘を担ぎ、お母さんと出かけた。
「 さあ 行きましょう だいち 」
「 ウン おかあさん〜〜 」
「 はいはい 」
伸びてきた小さな手を お母さんはしっかり握った。
いつまでも 甘えん坊なんだから〜〜〜
ふふふ ま いっか。
だいち君のお母さんは いつも笑顔のおおらかな性格のヒトで
お菓子をつくったり お洋服を縫ったりするのが得意なのだ。
ともだっち ひゃくにん でっきるっかな〜〜〜♪
お母さんとだいち君は お歌を歌いつつ雨の道を歩いてゆく と ―
「 ・・・ あら? 」
「 ? ど〜したの おか〜さん 」
「 ほら あの方 ・・・ 傘 さしてないわ 」
「 ? あ ほんとだ〜〜 おか〜さん あのひと、かみ きんいろ! 」
「 そうねえ キレイな髪ねえ 小さな子供がいるわ 二人も!
あらら ・・・ だいちと同じ制服着てるわよ 」
「 あ・・・ ホントだあ 」
前方に雨の中 左右からチビさんが二人、お母さんの手にしがみついている。
お母さんは 傘をさしたいのだが ― どうにもこうにも困って立ち往生しいた。
「 あの ― 」
だいち君のお母さんは すぐに側までゆきその金色の髪のひとに
傘をさしかけた。
「 ?? 」
「 濡れますよ〜 お嬢ちゃん、 お母さんが傘をさすまで
ほら おばちゃんと手をつないでましょう? 」
お母さんは そのおんなのヒトそっくりのちっちゃなオンナノコに手を
さしだした。
「 ! ちがう もん ! 」
ちっちゃな女の子は 口をとんがらせた。
「 え? 」
「 ちがうもん。 アタシ すぴか。 おじょうちゃん じゃないもん 」
「 あらあら ごめんなさいねえ じゃ すぴかちゃん? ほら 」
「 ん 」
お母さんの差し出した手を そのこは素直に握った。
「 お母さん、 お嬢さん みてますから。 傘 おさしなさいな 」
「 ! ありがとうございます〜〜〜
坊や ちょっとごめんなさいねえ お母さん、貸してね 」
金色の髪のヒトは とて〜〜もキレイなヒトなんだけど
困った顔をしていた。
「 ん〜〜 」
だいち君は お母さんと手を離してすこし心細かったけど
胸をはって頷いた。
― だって。 やっぱり金色の髪の女の子がじ〜〜〜っと見てたから。
すっごくきれいな きんいろのかみ!
あ ・・・ め、みどりいろ だあ〜〜
「 〜〜 ・・・ ああ ありがとうございました。
助かりました〜〜 」
水色の傘を広げると 金色の髪のヒトはとてもうれしそう〜〜に
ぺこり、とお辞儀をした。
「 いえいえ〜〜 さあ お嬢ちゃん・・じゃなくて すぴかちゃん。
お母さんの側へいってあげて? 」
「 ん。 おばちゃん ありがと〜ございました 」
オンナノコは ぺこり、とお辞儀をした。
「 あらあ〜〜 エライわねえ〜〜〜
あのう〜〜 すぴかちゃんのお母さん もしかしたら・・・お子さん達、
星の空幼稚園 の 年少組さん ですか? 」
「 はい。 あら ・・・ 同じ制服 ・・・
じゃあ 奥様も? 」
「 はい。 これ ウチの息子です。 ああ 私 わたなべ といいます 」
「 僕! わたなべだいち! 」
「 まあ〜〜 島村といいます。 ウチのは双子で・・・ 」
「 しまむら すぴか ! よ 〜〜 」
「 ・・・ しまむら すばる ・・・ 」
お母さんの後ろから 茶色の髪のオトコノコが 恥ずかしそう〜〜に
笑顔を見せた。
「 ♪ 僕 だいち! すばるく〜〜ん? 」
「 ♪ うん! 僕 すばる! だいちく〜〜ん! 」
オトコノコどうしは するする近寄って手を繋いだ。
ね ? うん!
なんにも言ってないけど 二人はに〜〜〜っと笑いあい
この時から だいち君 と すばる君 の < つきあい > が
始まった。
二人はまだ知る由もないけれど 生涯にわたっての付き合いとなるのだ。
「 あらあ もう仲良しになったの? 」
「 うん おかあさん! えっと・・・ すばるくん デス 」
「 はい こんにちは すばる君。 だいちのお母さんです 」
「 こんにちは〜〜 僕 しまむらすばる デス! 」
「 えっと ・・・ すぴかちゃん デス。 」
だいちクンは ちょっぴりほっぺを膨らませている女の子の側にいった。
「 はい こんにちは すぴかちゃん。 だいちのお母さんですよ 」
「 こんにちは〜 おばちゃん じゃなくて〜 だいち君のおか〜さん
アタシ すぴか〜〜〜 」
「 まあまあ ありがとう〜 皆 なかよししましょうねえ 」
「「「 うん !!! 」」」
「 ・・・ ありがとうございます。 」
ちょっと離れてみていた金色の髪のヒトは にっこり笑った。
「 これから仲良し してね、 わたなべ だいち君
」
「 え へ〜〜〜 は はい 」
だいち君は と〜〜っても嬉しそう〜〜に笑った。
そして お母さん二人、子供たち三人
傘をならべて 幼稚園に向かった。
とっもだっち ひゃくにん でっきるっかな〜〜〜〜♪
賑やかな歌声に 雨の音なんか聞こえなくなっていった。
「 おか〜さん あした すばるくんとウチであそんでもいい 」
ある日 小学校から帰ってくると だいち君は一番にお母さんに尋ねた。
「 すばる君と? ええ いいわよ。 それじゃ クッキー焼きこうか 」
「 わあ〜〜い わあい くっき〜〜♪ 」
「 あ それじゃ あとですばる君のお母さんにお電話しておくわね?
学校から一緒に帰ってらっしゃい。 」
「 う わ〜〜い♪♪ 」
小学生になっても だいち君とすばる君は仲良しだ。
すばる君ち は 岬の方で遠いのだけど、だいち君はよく遊びにゆく。
お家には 白いお髭のおじいちゃまがいらして いつも面白いお話をしてくれる。
算数の宿題 とかも とて〜〜もわかりやすく説明してくれたりもする。
金色の髪のキレイなお母さんは とびっきり美味しいシフォン・ケーキやら
蒸しパンを作ってくれるのだ。
日曜には だいち君によく似たお父さんがいて いろんな写真を
見せてくれたり クルマの掃除を一緒にしたり する。
オトコノコたちは お互いに遊びに行ったり来たり・・・している。
「 たっだいま〜〜〜 おか〜さ〜〜ん 」
「 こんにちは〜〜 すばるデス 」
玄関で元気な声が聞こえた。
「 お帰り〜〜 いらっしゃい、すばるく〜〜ん 」
だいち君のお母さんは にこにこ・・・迎えに出てきてくれた。
「 さあ あがって あがって すばる君。
二人とも手を洗ってウガイしたら リビングにいらっしゃい。
お日様ぽかぽかよ〜 レジャー・シート、敷いてあるから自由に遊んでね 」
「 わあ〜〜いい〜〜〜 すばる君、 こっち! 」
「 うん だいち君 あ だいちくんのおばちゃん、 これ〜〜
僕のおか〜さんから〜〜〜 」
すばるクンは 紙袋を差し出した。
「 え なあに? あけてもいいかしら。 」
「 ウン。 」
「 ・・・・ まあ〜〜 マドレーヌ!! すばる君のお母さんお手製の
マドレーヌね? 」
「 うん。 みなさんでどうぞ って 」
「 わ〜〜〜 ありがとう! だいちのお父さんね、これ 大好きなのよ
もっちろん おばちゃんも大好き♪ 」
「 うふ 僕のお父さんもお母さんのまどれ〜ぬ 大好きだよん 」
「 そうよね〜〜 ありがとうございます ご馳走さまでした って
お母さんに伝えてね 」
「 うん! 」
カチャ カチャ ― カチャ ・・・・
だいち君のお母さんは さささ・・・っとさっくり卵白を泡だてた。
「 さて と。 生地と合わせて絞りだし、と。 」
オトコノコ達は 仲良くリビングで電車の模型やら時刻表、地図を広げ
遊んでいる。
「 ふふふ 楽しそうねえ 〜〜 それじゃ ・・・ 」
「 おか〜さん のど かわいた〜〜 」
だいち君が キッチンに現れた。
「 あらら ・・・ ジュースがいい? 麦茶にする? すばるクンは 」
茶色の髪のすばる君もついてきた。
「 僕 ・・・ むぎちゃ がいいです 」
「 はいはい ちょっと待ってね〜〜〜 」
「 ― おばちゃん なにつくってるの 」
「 クッキーよ。 これからテンパンに絞りだして焼くの 」
「 ・・・ しぼりだす ・・? 」
「 そうよ〜 こうやってね〜〜 」
お母さんは慣れた手つきで くるり、くるり、とクッキーのモトを絞りだしてみせた。
「 ・・・ ぼく やってみたいデス 」
「 あら やってみる? ほら・・・ こうやってもってね〜
」
「 ウン ・・・ う・・・っんと 」
すばるクンは ぷっくりした手でかなり上手にくるん くるん ・・・
テンパンに絞りだした。
「 わあ〜〜 上手ねえ〜〜〜 すごい すごい〜〜〜 すごいなあ〜
ねえ だいちもやってみる? 」
「 ・・・ 僕 どろっぷ・くっき〜 がいい。 」
だいち君は クッキーのモトをスプーンで掬って ぽん ぽん ・・・と
テンパンに並べた。
「 うん いいわねえ〜 皆で作ったクッキーだわ〜〜〜
きっとものすごく美味しいわよ〜〜〜 さっそくオーブンに入れなくちゃ。 」
「「 わあ〜〜〜い〜〜〜〜 」」
楽しい楽しいオヤツ・タイムとなった。
コンコン ・・・ 勉強部屋のドアがノックされた。
「 開いてるよ〜〜 」
「 だいち? 手紙よ。 フランスから! 」
「 え?? 」
思わず振り向いた息子に お母さんはに〜んまり笑って
少し厚めの封筒を渡した。
「 ふふふ〜〜〜 すぴかちゃんから でしょう? 」
「 ・・・ お〜〜 そうだ! へ〜〜 イマドキ てがみ かあ〜〜
激レアだなあ〜 」
「 あらあ〜〜 いいじゃない、素敵♪
ね・・・ あとでちょこっとだけでもいいから おしえて。
すぴかちゃん 元気かしらあ 」
「 はいはい わかったから。 さんきゅ 」
だいち君は うなずきつつ お母さんを部屋から押し出した。
「 ふう〜 もう〜〜 オバサンなんだからあ〜 ま 本当だもんな〜
え・・・ なんだって ・・・ 」
パサリ。 封筒の中からは薄い便箋と小さなカードが入っていた。
「 ・・ なんだ これ? 必勝祈願護り? これ すっぴ〜の字じゃん
え ・・・ 」
手作りらしい < お護り > を手に だいち君は ふんふん・・・と
短い手紙を読んだ。
だいちくん。 元気でがんばってる?
ウチの愚弟は どうかなあ〜〜〜
もうすぐ本番でしょ、お護り、作ったよ〜〜
これでアタシもバカロレア通過したから。
がんばれ〜〜〜 一ツ橋 突破せよ!!!
すぴか より
「 ・・・ ん〜〜〜〜 ありがと すっぴ〜〜〜
俺 絶対合格するから。 そんでもってウチの店手伝って
そんでもって ― 必ずすっぴ〜を迎えにゆくんだ! 」
小さなお護りをきゅ・・・っとにぎり わたなべだいち君は
またまた決意を新たに 受験勉強の追いこみにかかるのだった。
そして ― その春。
しんゆう・二人は 見事に サクラ咲く となったのだった♪
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「 友達? それも、親友? そうねえ ・・・ 」
フランソワーズはしばらく考え込んでいた。
「 そう ねえ ・・・ カトリーヌ かしら ・・・ 」
彼女は 遠い眼差しを窓の外に向けた。
二月の湘南地方は 光の春、 風はまだまだ冷たいけれど
太陽は次の季節の到来を しっかりと告げてくれる。
あの頃 ・・・・
幸せしか知らなかった わたし・・
庭の花壇では 水仙が花盛り、白い花が揺れている。
「 うふ・・・ 彼女 どうしているかなあ ・・・
プロのダンサーになって 幸せに結婚したかしら ・・・ 」
思わず自分自身の結婚指輪に視線を落とし、ほう・・・っとため息が漏れてしまう。
「 彼女とは仲良しだったけど でもず〜〜〜っとライバルでもあったの。
そうねえ ジュニア・クラスのころから かもね・・・
二人とも バレエ団に入りたくて オーディションは必死だったもの。
カトリーヌはね 回転技の天才だったわね〜〜〜
今じゃ 32回のグラン・フェッテ、 全部ダブルで回るヒト、たくさんいるけど
わたし達の頃は 四回に一回ダブル〜とかくらいだったの。
でも彼女は全部ダブルで回ってみせる! って努力してたわ 」
いったい何十年前のことなのだろう ・・・ ますます彼女の眼差しは
遠いものとなってしまう。
その先には 古い稽古場で熱心にレッスンする少女たちが
みえているのかも ・・・ しれない。
「 ふふ ライバルで親友 なんて ヘン? でもいいじゃない?
カトリーヌ ・・・ バレリーナとして成功して幸せになっていてほしいわ 」
もう昔話だけど ・・・と 彼女はため息をつく。
「 え? 今?
今は ・・・ そうねえ みちよちゃん も親友かなあ
全然タイプが違うからライバルってのとはちがうわねえ。 なかよし かな。
あ。 タクヤだって ある意味、親友だわ。
あのコ 才能あるのよ 今のヒトたちは幸せよねえ
え ジョー? いやだあ〜〜 自分の夫は自分の半分 でしょ? 」
カトリーヌ ・・・ 幸せに生きていてほしいなあ
§ 親友 ( ライバル )
「 え?? 行方不明?? ウソでしょう??? 」
カトリーヌは稽古場の事務所で 思わず声を上げてしまった。
「 し〜〜〜〜 これは内密なのよ 」
事務所のヒトはあわてて口の前に手を当てた。
「 あ・・・ すいません でも それ ほんとう?
だって・・・ オーディションに受かって入団したのでしょう?? 」
「 それがねえ ・・・ どうも ・・・
」
「 どうも ってなに? それで彼女 ・・・ フランソワーズは? 」
「 だから 行方不明なんですって 」
「 そんな ・・・ 」
「 カトリーヌさん これは極秘ですから 」
「 ・・・ わかったわ。 あ 第五レッスン室、 使えます? 」
「 自習? ええ どうぞ 」
「 メルシ 」
カトリーヌは きゅっと表情を引き締めると 更衣室に向かった。
トントン カタン。
ポアントを慣らすとほとんどストレッチもせずに
彼女は グラン・フェッテを始めた。
しゅ ・・・ しゅ ・・ しゅ ・・・・ !
右脚が小気味よく宙を切り裂いてゆく。
途中から ダブル ― 一拍の間に二回転する ― を入れ始めた が。
ぐ ・・・ あ あ〜〜〜
ガタン。
勢いが付きすぎ、バランスが崩れた。 軸足がズレて −−−
バンッ !!! そのまま床に座りこんだ。
「 どうして ・・・!! なんで!?!
ファンに勝つことだけど 目標にしてきたのに 〜〜〜〜 !!!
私は どうしたら いいのよ?? 」
カトリーヌは 天井を仰ぎ泣き出した。
「 ファン あなたの踊り、いつだって憧れだった ・・
あの優雅な動き 豊かなアームス 脚さばき ・・ 永遠の憧れだったのよ!
この前のコンクールでは負けたけど
・・・ でも 次こそは! って 必死で練習していたのに !! 」
「 私 ・・・ 何を目標にしたら いいの ・・・?
行方不明 なんて ・・・あんまりだわ ・・・・! 」
「 フランソワーズ・アルヌール ・・・ 私の永遠のライバルで 憧れ・・・ 」
ひどい ひどい ・・・
カトリーヌは ひとり泣き続けていた。
ここにも あの亜麻色の髪の少女のために 涙をながす人物がいたのだった。
§ 親友 ( なかよし )
「 なあに? なにかアタシに聞きたいの? 」
小柄で丸顔、愛嬌たっぷりの笑みでその女性は答えてくれた。
更衣室から よく通る声が聞こえてくる。
「 みちよ〜〜〜 先に着替えてるわね〜〜 」
「 あ うん! すぐにゆくから。 お茶 しようね〜 」
更衣室に声をかけてから 大きな瞳をくるり、と回す。
「 え? フランソワーズ? ああ 今 さけんでたコだよ?
よぼうか? え ちがうの? 」
なんなの? と少し真剣な顔になったのだが ・・・
「 あ〜 彼女との < おつきあい > について?
う〜〜ん もう長いかもなあ ・・・彼女が研究生で入ってきた時からだもん。
あはは アタシだってもっと若くてぴっちぴち だったんだよ? 」
今も 元気いっぱいな彼女、みちよさんは屈託なく笑う。
「 あ〜んなキレイな容姿なのにさあ なんか ・・・ 遠慮してて・・・
おどおど・・・ってのとは違うんだけど ね。
なんなのかなあ〜 笑ってごらんよ〜〜って思わず 声かけちゃったんだけど 」
みちよさんの笑顔には 誰でもほっとすることでしょう・・・
まして 初めての場所で緊張している時には。
まあ ― いろいろ事情もあるし ね。
「 事情? さあ・・・ そういうの、聞きほじるの、好きじゃないし。
アタシは 今のフランソワーズが好きなだけ だもん。
可愛いよお〜 彼女。 奥さんになっても お母さんになっても
中身はさ 万年少女 みたいなトコ、あるし。 」
そりゃ そうだろう・・・
所謂 < 同期 > として ライバル心とか感じませんか〜
「 ライバル・・・? 彼女と?
う〜〜ん 全然違うタイプだけどねえ〜 あんまし感じないなあ
なんで仲良しなのかって? そう ・・・ だなあ〜〜
なんつ〜か ウマがあうっての? フランソワーズの のほほ〜んと
したとこ、 好きなんだわあ〜 」
あなたも その ふわ〜〜ん とした雰囲気がとても魅惑的です。
「 あは そう? ありがと。
彼女とアタシとは踊りも全然違うし ・・ あ〜いう風に ふわあ〜〜〜っと
空気を感じるおどり、 いいなあ〜って思うわね。
アタシ? アタシはひたすらアレグロとか回りモノがすき。 」
知ってます〜〜 みちよさんの踊りは小気味よくパンチが効いていて・・・
素晴らしいです。
「 あは ありがと。 でもね〜〜 アタシもそろそろオバサンだからね〜
そろそろ若いコたちの時代 かなあ・・・・ あ アタシも結婚したし。
ま フランソワーズみたくず〜〜っと踊っていられるといいなあ と
思ってるの。 」
他に仲良しさんっています? フランソワーズさんに。
「 う〜〜ん・・・ あ そ〜そ〜 タクヤってば ホンキっぽいんだよね〜〜
彼ってばさ〜 イケメンで上手だしさ〜 モテ男なんだけど〜
あいつは フラン一途! なんだよねえ ・・・
ホントはか〜〜なり純情なんじゃないかなあ〜〜ってアタシは思ってる。
アイツねえ いいヤツなんだよ、うん。
踊りはもう〜〜どんどん上手くなってく・・・ってトコだしね。
でもね あいつは フランソワーズ 命! なのよぉ〜〜
マジで ホンキ なのね〜〜 かわいそうに ・・・
あっは むり〜〜って 誰か教えてやったらど?
フランソワーズの旦那さん すっご〜〜く優しいヒトでさ
彼女にべた惚れ・・・ってか あそこは熱々夫婦なんだよ 」
幸せなご夫婦なんですねえ〜〜
「 仲良しさんだよ。 ま 誰だっていろいろ・・・事情はあるよね。
アタシはそんなコトに 興味ないし。
アタシはその本人がすき! と思えばそれでいいんだ。 」
「 みちよ〜〜〜 ね〜〜 終わったぁ? 」
更衣室から金髪の女性がにこにこしつつ出てきた。
「 あ ごめん 今ゆくよ。
ねえ あんた、 ご本人に直接聞いてみれば?
気さくなコだから 答てくれるわよ、 じゃ ね〜〜 」
丸顔の彼女は ひらひら〜〜 手を振って更衣室へ消えた。
「 ? 」
「 あ あのぅ〜〜 フランソワーズ さん ? 」
「 はい? 」
「 あ あのう つ 次の舞台についてなにか伺えますか? 」
「 ・・・ ああ おん・すて〜じ とかの方?
もう発表になってますけど 」
金髪の彼女は 廊下の掲示板をちらり、と眺めた。
「 あのね〜
今度 みちよ と創作作品 踊るのよ
若い男の子いれて。
マダムの振りつけよ、以前の作品を振り直してくださる予定です。
タイトル?
イレギュラー トライアングル
というの。 」
「 とらいあんぐる ? さ 三角関係 ですか?? 」
「 あ〜〜 そう かも。
この作品は代々、大きなひと、小さなひと 男性 で踊ってきたのですって
わたし ものすご〜〜くたのしみ 」
「 クラシック なんですか? 」
「 ん〜〜ん ・・・ ポアントは履くけど、
コンテ ( コンテンポラリー・ダンス ) に近いかな〜〜
うっふっふ〜〜〜 楽しみにしててくださいね〜〜 」
「 おまたせっ ! 」
丸顔女子が 飛び出してきた。
「 あ〜〜 それじゃ また〜〜 みちよ、ゆきましょ〜 」
「 うん♪ 」
凸凹コンビは 仲良くスタジオを出ていった。
は あ ・・・ 仲良し でも ライバル かあ ・・・
そう それも あり、ですよねえ ―
Last updated : 02,05,2019.
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********* 途中ですが
それぞれの人々にとっての ベスト・フレンド について
書いてみたいな〜〜と思いました。
すいません、体調不良で短くなってしまったです、
続きは もう少し書けると思います〜〜 <m(__)m>